4/11、運がいいことにREALIVE初日を観る事ができた。前半はとてつもなく豪華で高級な幕の内弁当を出されたかのような、宝石箱をひっくり返したかのようなラインナップで、なかには謡からのSEIMEIなど意表を突きながらも「成る程」と唸るようなコラボレーションもあった。m7kenjiさんの新作か?と思われるドット絵も嬉しかった。
YouTubeメンバーシップ(以下メンシプ)等での最近の羽生結弦さんの様子を知っている人なら分かっていただけるかと思うが、羽生さんはここのところかなり気持ちが落ち込んでいるようだった。なので、羽生さんのメンタルの状態を非常に気にしていた訳ですが、どうやら羽生さんは本番を迎え観客の反応を得て、精神が落ち着いたようだった。
羽生結弦は私と似ている。こんな事を言ったら多方面からお叱りを受けるかと思うが、こんなしょうもない自分と、世界的アスリートの自分は、どこか似ているのである。かつて羽生結弦はRE_PRAY横浜公演にて「皆さんの写し鏡でありたい」と発言した。つまり、私は羽生結弦を見て、自己を見いだしているのかも知れない。が、それにしたって、羽生結弦は自分に似すぎているように感じる部分があるのだった。
かつて私はデザイン系専門学校に通っていた。自分が表現したいものを、他人の評価など気にせずに作るタイプだった。そんな中、就職活動の「自己分析」で完全に自分がブッ壊れた。まだまだ求人は買い手市場で充実していない時期で、ブラック企業蔓延る広告や印刷業界への就職は諦めた(今となれば正解だった)。卒業制作は他の人達が順調に、楽しそうに絵を描いていくなか、私はといえば自分の中の心の傷を抉るかのような気持ちで作っていた。出来上がったのは死の臭いがする作品で、ハッピーエンドとは言えないような絵本だった。
そんな風に私は作品を作っていたので、羽生さんが作品を作りながらメンタルを病んでいったり、傷口を抉るような真似をしてしまう理由が分かる気がするのだった。自分の内面に掘り込んでいくと、自分のダメなところばかり目に付いてしまう。羽生さんも私も自己肯定感が低いので、生半可な出来では自分を許せないのだ。最近の私はゆるい絵しか描いていないので、だいぶ落ち着いたとは思うが、羽生結弦は卒業制作を作っていた頃の私のような精神状態をずっと保っているのではなかろうか。
普通の人の瘡蓋はただの血の塊でしかないが、羽生結弦の瘡蓋は宝石のようになる。羽生結弦は何度も何度も瘡蓋を剥がし、血を流し、また宝石にして、剥がして血が出て宝石にして…を繰り返しているように見える。羽生結弦は自身のことを「媒体」とも言う。また、RE_PRAYのプレイヤーズガイドでは自身ををひび割れた器に例えていた。
水を足さなかったら枯れてしまうけれど、周りの環境があって、たとえば僕で言えば、見てくださる皆さんとか一緒につくってくださるスタッフとか、そういう人たちがいるから、僕はその空っぽのひび割れているウツワにも、漏れてはしまうけれどずっと水を足し続けることができるのです。(RE_PRAY プレイヤーズガイド 52pより)
共感覚にしたってそうだ。共感覚だけなら良かっただろうが、羽生結弦はひび割れた器の持ち主。穴もヒビもない普通の器の人々には理解しにくい苦労があることだろう。私に共感覚は無いが、ひび割れた器を持つ者同士、ある種の過敏さや生活面での苦労が少しは想像できる。美しい金継ぎが出来るとしたら、それは自分自身を赦し、愛せるようになった時なのだろう。それまで羽生結弦は自分の宝石のような瘡蓋を剥がしながら、スケートを滑り続けるのかも知れない。羽生結弦という桜の樹の下に、羽生結弦が埋まっているように。
REALIVE後半、「Prequel:Before the WHITE」は初見では話がよく分からないというのが正直な感想だったが、この「ぶん投げ」感に「巨匠」の萌芽を感じさせた。正確にはEchoes of Lifeの頃から「巨匠」感があったのだが、Prequelで「いよいよか」と感じた。私はこの「ぶん投げ」は観客の読解力を信用しての「ぶん投げ」ではないと思っている。「私はこう投げました。あなたはどう受け止めますか?」という「ぶん投げ」のように感じた。
私は以前から羽生結弦は「巨匠」を目指すべきだと考えていた。内輪で終わらない、世界に名を轟かせる巨匠だ。黒澤明や宮崎駿のような存在に、羽生結弦はなるべきなのだ(なったらそこで自分を赦せるようになるのかは分からない)。そのためには普遍的な「正しさ」が必要だ。その「正しさ」はRE_PRAYやEchoes of Lifeで示されてきた。だから今回の「White...」も、何かしらの「正しさ」を示してくるのではないかと思う。
混迷を極める世の中で、羽生結弦が呑気に「世界って美しいよ✨️キラキラ✨️」という内容だけで終わりにするとは思えないのだ。何故なら羽生結弦だから。埋められないひび割れた器の持ち主で、宝石の瘡蓋を剥がし、羽生結弦という桜の樹の下に羽生結弦を埋める、羽生結弦だから、何か世の中へのメッセージ的なものもあるだろう。
ぶっちゃけ、現状の世界情勢ではWhite...が観れるかは未知数だと思う。そんな情勢で自分が出来ることは何か?4/19の国会前のデモには「架空団体のノボリ」を持って出向くつもりだ。White...だけではない。全ての表現物を守るためにも戦争を避け、イランとの対話を進め、ナフサや原油の供給を速やかに行うべきではなかろうか。
RE_PRAYの裏テーマは「戦争やメディアによる印象操作、政治への考え方」だった。Echoes of Lifeはド直球の反戦だった。ダニーボーイもミーティアも、根底には反戦・非戦がある。さて、White...はどうなるのか。Echoesは今上演していたら、国の権力者から睨まれるような作品になっていたかも知れないな、と思う。だって、憲法改正に反対してたから。
White...はどうなのか。まずはPrequelのアフターパンフレットを楽しみにしたいと思う。
