あおなじみ

日常生活。恨み節。性別捨てたい非国民。ネガティブ。

羽生結弦「RE_PRAY」考察

※注意※このブログは解説に必要なため「RE_PRAY」の内容を細かく書いています。UNDERTALE、FF9FF10、東京喰種(:Re)、MOTHER2エストポリス伝記2などなどの重大な部分までのネタバレが含まれます。ネタバレは嫌という方は読まないで下さい。

当初はスケート界隈向けに書こうかと思ったんですが、件の離婚の事もあり…「RE_PRAY」という作品は余所の界隈の人にも見て欲しいし、今後配信などで多くの人が目にする機会も出てくるのではないかと思ったので「フィギュアスケート羽生結弦もよく知らんけど、なんとなく見てみた」くらいの人にも理解できるように書こうと思います…。長文ですし(1万文字以上!ふざけてるのか!)、分かりにくかったらすみません。

まえがき

羽生結弦アイスショーをすると聞いて、思い浮かぶものは何でしょうか。綺麗な衣装を着て、華麗に、時にはかっこよく滑っている羽生さんの姿を想像するのではないかと思います。そしてそんな羽生さんの姿は日常からかけ離れたものであり、非現実的なフィクションとしてのエンタメとして鑑賞するのではないでしょうか。
そもそも昨今の各界隈の有り様を見るに「推し活」という構造そのものが、ある種の「現実逃避をするための装置」として働いており、推し活がそのような機能を果たしているからこそファンが社会性のない言動をするのではないかと私は考えています。(もちろん、健康的に、依存性なく、自覚を持っての推し活は別です)
ましてやその推し活の対象が「羽生結弦」となったら、それはもう依存しているファンが大量にいるわけです。しかし羽生氏はその状況を好ましく思っていないかのようなメッセージをこれまでも度々発しており、今回の「RE_PRAY」という作品では決定的にそれが突きつけられました。
「RE_PRAY」は羽生さんがプロ転向後から始めた「ICE STORY」という物語仕立てのアイスショーの第2弾となっています(ストーリーは繋がっていません)。MIKIKO先生が演出をしており、前作、東京ドームで行われた「GIFT」ではELEVENPLAYさんがダンサーとして加わっていました。
そして、一般的な羽生結弦のイメージからは少しずれそうな、暗い内面が吐露された内容であることも特徴でしょうか。「GIFT」は自伝的な内容であり、大まかに言うと夢を追うことの孤独感や、夢を持つことの大切さを訴える作品でした。大規模な演出の中で滑ったり踊ったりする羽生さんを見ているだけでも楽しいのですが、今回の「RE_PRAY」は一気にストーリー解釈の難易度が爆上がりし、普通に読解力がありそうなファンですら困惑させる作りとなっております。でも、作品のテーマ的におそらくわざとそうしている可能性もあるかな~とも思います。私みたいに「気付いてしまった人」にだけ伝わるくらいの難解さにしてるんだろうな、と。

RE_PRAYはどんな作品なのか

「RE_PRAY」では劇中で羽生さんがファミコン風のゲームを遊ぶことによりストーリーが進んでいく形になっていて、主な登場人物は「ゲームを遊んでいるほうの羽生結弦」、「ゲーム内の羽生結弦(+演じるプログラム)」そして「プレイヤー=観客」という入れ子構造になっています。ゲームの進行に合わせてゲームキャラクターである羽生結弦が氷上で滑るという、非常に面白い作りになっています。
ベースとなる倫理観や劇中劇(劇中劇中劇?)であるゲームの部分の設定は「UNDERTALE」、生命観としてはFF9、エッセンスとして「東京喰種」が含まれていて、要素として「FF10」、祈りの象徴として「エストポリス伝記2」が入っている、といった感じになっております。
特に「UNDERTALE」からの影響が強烈で、Gルート*1の最後にどうなるか…というところまで理解していないと完全に意味不明だと思います。
「RE_PRAY」で羽生さんが主に伝えたい事は、ざっくり言うと表向きには「自分の人生のコントローラーを決して手放さずに生きていってね」「コントローラーを他人に握らせないで」「自分の人生は自分で責任を取るべき」…といったところだと思うんですが、ショーの構成はどう見ても明らかに自分を応援している"ある種のファン"に対する批判ともとれる内容でした。

分かりにくい事を自覚しているからか、今回のショーでは少し異例な事がありました。普段は作品の解釈を観客に委ねる羽生さんが、珍しく解釈のヒントを口にしたのです。「観客はゲームのプレイヤーであり(劇中に登場する)神様である」「(観客のみなさんは)キャラクターに支配されていませんか?」と。また、パンフレットでは「僕自身もいろいろと出てきたりはするのですけど、でも僕は、プレイヤーである観客の皆さんや見てくださる皆さんの代表としての存在、みたいな感じです。滑るプログラムたちは、そのゲームのなかの存在、という風に考えています」とお話しされていました。今回ばかりは、この言葉から外れるような解釈をされたくなかったのかも知れません。
もちろん「それぞれの視点からそれぞれの価値観でこの物語を咀嚼してね」という趣旨のことも仰っているので、どう考えるかは自由だと思います。しかし考察をしていて、あまりにも意図的に仕込まれている要素が多いように感じたので、ある程度その辺の要素は受け手として拾うべきなのかな、と感じた次第です。

ゲームの始まり

劇中劇(劇中劇中劇…)のゲームのストーリーはおそらく平昌五輪~北京五輪がモチーフで、ドット絵の羽生結弦が主人公です。ゲーム内の羽生さんはモンスターを倒しパワーアップしていきます。しかし徐々に不穏な展開になっていき、出さなくてもいい犠牲を出してしまっているかのようなモノローグも出てきます。
結論から言ってしまうとこの劇中劇中劇なゲームは「UNDERTALE的世界」なので「モンスターを倒さなくていい世界」です。つまりゲーム内の羽生結弦は「Gルートを突き進む羽生結弦」という事になります。そしてここに「観客はゲームのプレイヤー」という羽生さんの言葉を当てはめると「Gルートに導いてしまったのは"ある種の観客(ファン)"」という事になります。

ショーの冒頭、白いローブをまとった羽生さんが氷上のグリッドの幕の中で舞います。ここの衣装はタロットカードの1番「魔術師」がモチーフで、ポーズも一緒です*2。背景には黒い天使のシルエット。ここはUNDERTALEにおける「デルタルーンの紋章」と関係しており、黒い天使=死の天使という事だと思います。「いつか終わる夢」を滑り、モニターにゲームをする羽生結弦が映し出されます。

「激流に飲まれている」「押し寄せる流れに抗う事は出来ない」「できないからしなかった」「何度もその流れに抗う」「壊れる、止まる」「幾度となく 繰り返される 何度も見る 同じ景色」「繰り返し流れてくる岩」「あまたの生物の命」「それを横目に 生きながらえている」「息をする できない やめる」*3「息を(する) やめる」*4
「世界の色が霞む 薄れゆく 気がつく」「周りには 命がある」「一つ一つの命」

モニターにはゲーム画面を見つめる羽生結弦。その周りには光の粒が漂っている。
ここで語られる「激流」や「流れ」はおそらく現実世界の事も指しています。

「手にすれば この激流から逃れる力を」「手に入れることが出来そうだ」

UNDERTALEを遊んだことのある人はもうこの時点で「あっ…(察し)」となると思うんですが、ここでGルート的な演出が入ります。「手に入れることが出来そうだ」の部分で、何故か羽生さんの口の動きと台詞が合っていないんですよ。UNDERTALEのGルートには「キャラ」

*5というキャラクターが出てくるんですが、こいつは虐殺を繰り返すプレイヤーの身体(操作権)を徐々に奪っていき、最終局面ではプレイヤーが操作していないのに勝手に動かしてきます。つまり、この時点でプレイヤー(キャラ)=観客に羽生さんが操られ始めている、という事になります。

羽生さんは「流れる命を手にする?」という選択肢で「YES」を選び、手の中にキラキラした無数の命たちを納めます。ゲーム画面には「流れる命を 手にした」「生物の命を つみ取った」との表示。
「喰らう」口を拭う羽生さん。「生きる力を手に入れた」*6ここで画面にはドット絵の赤いハート*7。口角から蜜を滴らせる羽生さん。

生きる

リンク上には赤い2本のレーザー光。般若心経が流れ、女王様系魔王といった趣の黒い衣装を纏った羽生結弦が登場鞭が似合いそうなんだわこれが羽生結弦をGルートに導いてしまった"ある種の観客"とはどんなファンなのか、ここでわかります。
ここでの曲は椎名林檎の「鶏と蛇と豚」です。こちらの曲は仏教の三毒「貪・瞋・癡」がモチーフとなっています。歌詞を読んだらもう分かりますよねって感じなんですが、ようするに「無知故に憎しみを感じ、必要以上のものを求めているファン」が羽生結弦をGルートに導いてしまったという事になりそうです。
「鶏と蛇と豚」では羽生さんの背景のモニターに赤いが出るんですが、この▲は先程の天使と同じくUNDERTALEでの「デルタルーンの紋章」がモチーフになっています。この紋章における▲は「モンスター」を意味します。モチーフがモチーフなだけに、東京喰種を思わせる描写でもあります*8。曲が終わり、せり上がり式のステージの上に立つ羽生さん。会場に響き渡る心音に合わせ、ステージ上で舞います。

崩れかけた命 魂 器 そこに生きる力が宿る 生きたいという ケツイ
日常という激流から抜け出そう 走り去る事なんかしない
ただまっすぐ歩く 激流に逆らって 歩く 突き進む 微動だにしない強いケツイ
後戻りなどしない 後先など考えない 私が この世界のルールだ

後からこの台詞の意味がわかってきますので、覚えておいて下さい。
ここの「ケツイ」というのは三毒様の前に出てきた赤いハートを指します。UNDERTALEでは人間の魂に色があり、赤いハートは「ケツイ」を司っています。そしてこのケツイの力は「セーブの能力」でもあります。このセーブの能力も今後の展開に関わってくるので、覚えておいて下さい。

白い花~Hope&Legacy

軽快なチップチューンに合わせリンクを去る三毒様。リンク上にはドット絵三等身のプレイヤーキャラクターの羽生さんが描写されます。画面にはアクションRPG風の見下ろし型フィールドのドット絵。

世界に色が付いた 突き進んでいった 次々に出てくる敵を倒していった
戦ううちに成長していった より強く より深く進んでいった
強くなって出来ることが増えた 欲しい物も手にはいるようになった
もう激流に飲まれる事などない

ここで画面には白いお花が1輪。このお花のシーンはお花の周りだけ光が当たっており、UNDERTALEでフラウィがヒョッコリ出てきそうな構図となっております。
「自由を手に入れた」花を持ち上げる羽生さん。
ここでさらに強い敵が現れ、倒すために強い装備が必要になります。モンスターを倒し、素材を集めて強い敵を倒す。新たな強い敵が現れるたびに、同じ事を繰り返す羽生さん。

そのたびに強くなった 強くなっていく 実感があった

しゃがみこみ、白い花を見つめる羽生さん。ここでの白いお花の数は1本から13本に増えています。何故13本か?おそらくこの13という数字は「羽生結弦が平昌五輪後~北京五輪までの間に出場した試合の数(個人戦)」の数です。
ゲーム内の描写からすると、モンスターを倒すことによって白い花が増えているようです。金メダルがモチーフでしょうか。しかし現実世界では1位にならなかった試合もあります。観客はゲームのプレイヤーであるとすると、この白い花=金メダルは「プレイヤー(観客)の操作により羽生結弦を操作して得たもの」という事になりそうです。
そしてなぜ白い花なのかというと、これはモンスターの死の比喩であり、タロットカードの13番「死神をモチーフにしていると考えられるからです。白い花は「生と死の神秘」を暗示しているそうです*9。なぜ死神がモチーフになったのかは、前半終盤でわかります。

「自由」

モニターには白い花のアップ。白い花=自由の象徴でもあるようです。なぜ「自由」なのか。これも後でわかります。

そんな日々のなか 夢を見た 目の前にスイッチがある 視線を上げる

天井から吊された檻の中に、キラキラした丸いものたち(命)が入れられています。

そのままだと5つ スイッチを押せば1つ 消されていく
スイッチを押しますか?

いきなりトロッコ問題になり、画面に観客席がアップになります。「YES」「NO」が明滅し、選択権が観客にあるかのような緊張感ある演出です。11/4の公演ではスイッチが押され、5つが救われます。

「あなたの選択によって1つは消されてしまった」「そして 5つが救われた」

そして、夢の世界が再構築されるのですが、ここのキャラクターの色についてもおそらくUNDERTALEのタマシイの色と対応しており、緑→親切(Hope&Legacy)、青→誠実(Megalovania)、白→モンスターの魂(阿修羅ちゃん)となっております。
11/4では先ほどの分岐で「戦いの決意」ルートへ行き、Hope&Legacyが登場。11/5の阿修羅ちゃんのほうがよりGルートらしい展開なんですが、Hope&Legacyは元々自然を愛している感じのプログラム*10なので、Gルートでの行為を悔いるようなモノローグが入ります*11

世界の色がはっきりと見えてくる 大地は枯れている 迷い嘆いた
選択はあっていたのだろうか あんなにも多くの敵を 倒し続けてしまった
その素材(カケラ)で 強くなっていった それは間違ったことだった…?
答えは無い 誰にも正解はわからない
なら この世界で生きよう この世界で生きていくことを決意しよう
進んで行こう 前に一歩ずつ 戦い続けよう 抗い続けよう
世界に挑み続けよう どんな困難が待っていようと
どんな敵を倒すことになっても
戦い続けよう すべてを背負って 戦おう

サンズ戦(Megalovania)

ドット絵の羽生さんは、今度は横スクロールアクション風画面の中にいます。デジタルな世界でもがく羽生さんの映像が入り、映像は実写に。ゲーム内に羽生さんが入っていくような演出でしょうか。神殿のような柱の立ち並ぶ空間*12で、白黒の市松模様の床の上*13で天井から降ってくるブロックを避ける羽生さん。ゲームオーバーとコンティニューを繰り返しながらステージに挑みます。

虚無 何故戦うのか もう後戻りは出来ない 戻りたい 戻ろう
やめる? NO 本当にやめられるなら もうここで戦わないだろう
でも挑む 何故 そこに知らない世界があるから
そこに知らない物語があるから そこにこの続きがあるから
そのために今を選んできたから
本当に戦いたくないのなら もうやめればいい
やめられない その先へ行きたいという欲望
今を選んできた中での犠牲を 無駄には出来ない
そうじゃない したくないんじゃない
使命感 何故こんな事しているんだっけ…

徐々に上達していき、何とかギリギリでステージをクリアする羽生さん*14

「お前 ここに来るまで 一度も死んでないよな?」
「それとも 何度死んできた?」

ここでこの台詞。明らかにサンズである。サンズはGルート終盤に出てくるキャラクターであり、プレイヤーの殺戮を止めるためだけに戦うので、平和的なルート(Pルート=Pacifistルート)では戦いません。殺し続けた果てに戦うようなキャラクターです。
UNDERTALEのプレイヤーが聞いたことのあるようなSEと共にリンク上に姿を現す羽生結弦。冒頭は無音の中での必殺技をイメージしたスケーティング。そうです、曲は「Megalovania」。ついに羽生結弦は、サンズとやりあう事になってしまったのです。サンズの攻撃技のポーズもがっつり再現。何なら衣装の形部分の模様がサンズの武器「ガスターブラスター」っぽいし、骨攻撃も氷上に映されます。ここでの羽生さんはおそらくサンズを演じているのですが、ゲームの流れ的にはサンズを倒してしまったものと思われます。

ラスボス戦

いよいよ前半ラスト、羽生さんはついにラスボスと対面します。このラスボスはメカメカしいながらも、口元だけが露出しており(例えるならロボコップのように)、その口元はどこか幼さを感じさせます。
このラスボスは何を模したものなのでしょうか。先ほどから述べている通り、ショー前半のゲーム部分は「平昌五輪後~北京五輪シーズン」を模したものと考えられます。つまりラスボスは時系列的に見て北京五輪羽生結弦北京五輪で4Aにチャレンジしたときに出会ったもの。それは「9歳の自分」です。
キャラクター選択画面がモニターに現れ、羽生結弦の歴代プログラムを模したドット絵のキャラクターがラスボスと戦いますが、ラスボスにどんどん倒されていきます。プレイアブルキャラクターは「(旧)ロミオとジュリエット」、「パリの散歩道」、「オペラ座の怪人」、「SEIMEI」、「Hope&Legacy」、「Let's Go Crazy」、「天と地と」、「Realface」&「レゾン」、「阿修羅ちゃん」の順番で倒されていき「?」が残ります。
このラスボスの語る台詞がまた凄まじいことになっており、羽生さんの言うとおりプレイヤーが観客であるならば、かなり強めに窘めるような台詞となっています。

ようこそ よくここまできた 欲望のままに ここまできた気分はどう?
好奇心だけで 区区たるモノを踏み台にしてきた気分はどう?
ここに至るまでの人生(みち) 様々なことがあっただろう。
あなたは知っている。勝利することの快感を。道を切り拓くことの達成感を。
そして、次の物語の展開を楽しみに待っていた。
何もかも乗り越えてきたつもりだろう。だがそれは、大きな勘違いだ。
振り返れば分かるだろう。乗り越えてきたんじゃない。
他人も、身体も、精神も、自我も、命も、道徳も、倫理も、理性も、想いも、
夢も、希望も、憎しみも、嫉妬も、全て壊して、踏みつけて歩いてきた世界だ。
ただ考え、見ていただけ?選んだのだろう?
見続けるという選択を。この世界を見たいという心のままに
同時に、進めるよう、応援していたのだろう。
一緒に戦っていたのだろう。”レベルアップ”(経験)してきたのだろう。
何度も止められるチャンスはあった。それでも、物語に委ねてきたのだ。
もう、止められない。

何故こんなに厳しい事をプレイヤー(観客)に言うのでしょう?それはプレイヤーであるファンが、この台詞通りのことを、羽生結弦の生きている世界(フィギュアスケート界)に対して行ってきたからです。(詳しくはこのへんとか、このへんの記事を見ていただければ…)
"ある種のファン"が平昌五輪後~北京五輪までのシーズンで望んでいた事って羽生結弦がすべての試合で優勝し、すべての試合で高得点で評価されること」だったんです。花が13本に増えている=試合で13回勝ったという描写があるのも「ある種のファン(キャラ)が操作しているゲーム」だからこそなんですよ。羽生結弦の成績=自分の実力と思い込んでる人達が何人もいました。ここで、UNDERTALE内での”キャラ”のセリフを見てみましょう。

私は自分を蘇らせたものが何なのか悟った。
私たちは共に敵を殲滅し力をつけた。
HP…ATK…DEF…ゴールド…EXP…LV…
数字が大きくなる度にお前が感じたもの…
それが私…『キャラ』だ…

このキャラのセリフを考慮するのであれば、「点数」や「順位」で増長してきたファン(プレイヤー)たち=キャラなんじゃないかな?と思いました。ここで前半の三毒様の台詞を思い出して下さい。「後先など考えない 私が この世界のルールだ」です。この人たちは自分たちがルールなので、羽生さんが負けるたびに暴走していました。「日常という激流から抜け出そう」という台詞にも現れているとおり、羽生さんは"キャラ"たちが現実逃避のためにこうした行動を取っているという事も見抜いていたんでしょうね。しかも「一緒に戦っていたのだろう。”レベルアップ”(経験)してきたのだろう。」ですからね。これって完全に皮肉ですよね。だってこの人達がレベルアップ(成長)したわけじゃないから…。
そして、誰も止めてくれないこと(止める人がいても圧倒的に少数だったこと)、「暴れる人の気持ちは分かるから」と放置した人、見て見ぬ振りをされたことに絶望していたからこそ、こんな台詞をゲーム内で言わせてしまったんじゃないですかね…?

最終的にキャラクター選択画面に残ったのは「?」のパネル。パネルを選択すると赤い衣装を着たキャラクターが現れ、いとも簡単にラスボスを倒してしまいます。9歳の自分を、キャラに操られた己の手で倒してしまうわけです…。キャラが操っているのなら、そこまでするのがむしろ普通と言えるでしょう。自分の夢まで"キャラ"たちに壊されるのではないかという、そんな気持ちでだったのでしょうかね…。

破滅への使者

モニターが開き、赤い衣装を着た羽生結弦がリンクに登場。ついにゲーム内の羽生結弦は「破滅への使者」(FF9のクジャ)となり、リンクに降臨します。ここの演出もまた容赦ない。

さあ 最後だ これで 最後だ
突き進むために、ここまでの想いのために、
選択しよう
あなたの世界に、越えるべき壁はありますか?
壊すべき壁はありますか?

リンクに流れる「Bergentrückung」。リンク中央に進み、氷上に照射された「YES」を力強く踏みます。ここで音楽は「Asgore」に変わり、6分間練習が始まります。「Asgore」が流れ終わると「独りじゃない」にBGMが変わります。これも皮肉が効きまくった選曲なんですよね。
この「独りじゃない」はFF9の主人公ジタンが、自身のアイデンティティに悩み、独り突き進んでいく中で、仲間に励まされるところで流れるんです。でも羽生さんは「破滅への使者」になってしまったので、励ましてくれる仲間もいません。仲間になるはずだったモンスターは倒してきちゃったので……(泣いていいすか?)

戦う壊す戦う何と?
わからない いや、わかっている
けど わからなくなってくる
本当に壊すべきものがある
戦うべきものが目の前にある
ただ壊すことだけが全てなのか
わからない わかりたくもない
壊せ 壊せ 壊せ 進むために コワセ
おれのケツイが やっとだせる

ここの台詞は他と一人称が変わって「おれ」になっているうえ「やっとだせる」の部分だけ音声が二重に重なっているように加工されています。つまり、ここも"キャラ"に介入されている事の演出です。
FF9のクジャは物語終盤で主人公たちに立ち向かうため、自分が殺してきた沢山の魂を取り込み「トランス」します*15。羽生さんの衣装が赤いのもこのトランスクジャがモチーフだからです。その戦いの後、自分が作られた存在であり、寿命が定められていて、もうすぐその寿命が来ることを知らされます。ここでクジャの作り主ガーランドは「永遠ならざる時のため作られた死神……それがお前の存在理由だ」と、クジャのことを"死神"と言います*16。この事実を知ったFF9のクジャは、自分が滅びた後も世界が存続する事を許せず、故郷の惑星を破壊してしまいます。

ここで羽生さんが言うの「越えるべき壁」「壊すべき壁」とは何でしょうか。これも"キャラ"を踏まえて考えるとわかってきます。それは「第4の壁」です。UNDERTALEのGルートの最後は"キャラ"が現実世界のプレイヤーに向かって攻撃し、ゲームを強制終了させてきます。破滅への使者となった羽生結弦=クジャも、その「第4の壁」を壊して2次元の世界から「自由」になろうとするわけです。つまりこのゲーム内の羽生さんの言う「自由」とは「勝利することでしか得られないもの」という事です*17。先ほど書いたとおり、負けるたびに暴れる人が出てくるんじゃ、そういう考えにもなりますよね。もし、悪意(キャラ)に操られ、すべてを破壊できる存在が現実世界に飛び出してきたら…?それはもう、兵器に等しい存在になるでしょう。
演技が終わり、すべてを破壊し尽くした(と思われる)羽生結弦=破滅への使者(クジャ)は、セーブを試みます。しかし「セーブデータがこわれています」の表示。UNDERTALEのGルートでは、最終的に"キャラ"がプレイヤーに危害を加えるような形でデータが消されますが、平和的なPルートでは「セーブ」が「助ける」とか「救う」みたいな意味に変化する瞬間があります。
つまり、セーブしなくていいデータなのでそのまま壊れてしまった、もしくはセーブされなかった(救われなかった)、という事だと思います。そして、羽生さんがセーブしたいもの、守りたいものは後半に登場します。

後半・いつか終わる夢:Re

再び魔術師の羽生さんが登場。前半のループのようですが、ここでは前半の黒い天使のシルエットが白い天使になっています。ここをUNDERTALEのデルタルーンの紋章の伝承につなげると救いの天使ということになります。
前半とは衣替えし、白い衣装で「いつか終わる夢:Re」*18を滑る羽生さん。前半にもあったのカメラを隠す演出も「第4の壁」を意識しているのかな?と思ったりもします。
後半の羽生さんは命を「壊したくない すべてを大切にしたい」ので取り込みません。何も見えない暗闇、湖の底に落ちていく羽生さん。

ここはどこなの? "わからない"
選べない

世界を飲み込んだ水が枯れていき、命の水は枯れてしまいます。

ねえ神様、私は誰? これは夢の中?
私はゲームの住民ですか? ねえ、誰が動かしているの?
もし私がゲームの住人だったとしたら これを作った人は神様?
動かしているのも神様? じゃあ、呼びかけてみるか

ここで羽生さんが呼びかける神様とは、羽生さんの言葉通りの解釈をするならばプレイヤー=観客という事になります。前半で羽生結弦に介入し、あらゆるものを破壊してきたある種のファン(キャラ達)に対しての問いかけでしょう。

ねえ神様、聞こえてる? 聞こえてるんでしょ?
なんで私は産まれたの? なにができるの? 私の親は誰?
どこからきた? 何年産まれ? というか、いま何年?
もっとちゃんと作ってよ
あなたにとって私は ゲームの中のモブかもしれない
主人公なのかもしれない
でもなんで こんなにも設定がないの
てか、そもそもこの台詞も会話も
シナリオもあなたが作っているモノか
私は からっぽのウツワ

下線部分は声が二重に加工された部分です。ここは"キャラ"に内面を浸食された羽生さんが、何故自分がこんなキャラクターになってしまったのか、プレイヤー=観客に問いかけているのでしょう。プレイヤーの選択により、自分が「セーブされることを許されない存在」になってしまったからです。
ウツワというのはFF9から来ている表現で、クジャはテラという星で人工的に作られたジェノムという種族であり、ジェノムはテラの住民の魂の器になるために作られました。クジャはガイアという主人公たちの暮らす星の、魂の循環を乱すための器として作られたのですが、自我が強く危険な存在とみなされたので命のタイムリミットを設けられています。
つまり、ここでの羽生さんは前半でゲーム世界を破壊して用済みになったので、セーブする事すら許されず放棄された存在ということです。

天と地のレクイエム

天井にはたくさんのランタンを模したような光が。「天と地のレクイエム」は羽生さんが3.11での犠牲者を弔うために滑っていたプログラムです。ここで弔うのはゲームのなかで自分が奪ってきた命でしょうか。UNDERTALEではGルートに進むと二度と取り返しがつかなくなります。たとえ一度リセットしてPルート(平和主義=Pacifistルート)に行ったとしても、本当のPルートにはなりません*19。赦されないと分かっているからこその、贖罪の祈りなのでしょうか。演技終盤、ランタンの灯りは一つだけ残り、最後では少しずつ灯っていきます。

暗闇を歩く羽生さん。

一人なのかも分かっていない ただ暗くて 方向すらもわからない
10cm先すらも 見えない 周には だれか居るのかも知れない
けれど 見えないからわからない
どこに進んでいるのか どこに向かっているのか
進むのが 怖い この場所にいることも 怖い
選択することも できない
怖い 何もかも 怖い 何かしたら 何かは壊れてしまう
自分のせいで 何もかも壊れてしまいそう
選ぶものがない 選択肢はない
「自由」を与えられた
ルールが消えた世界 これが「自由」だ
暗すぎて神様からも 観測されない 暗闇の中「自由」に動くことが出来る
生きているのか分からないほど 暗い
でも「自由」なのだ どこにも進めない
水が落ちてきた 冷たくて でも温かい…?
生きている 感じられる 道が照らされる 進める
神様が導く方へ 水が照らす方へ

ここで述べられる「ルール」というのは競技的な意味もあるでしょうが、ここはおそらく三毒様の「私がルールだ」でいう"(キャラの考えた)ルール"でしょうね。つまり「勝利することのみで得られる自由」から解き放たれた、という事です。勝利と死の象徴である白いお花はもう要らないのです。

あの夏へ

このプログラムは「千と千尋の神隠し」のハクがモチーフですが、ハクは名前を奪われた神様なんですよね。名前もなく、神様からも観測されない場所で新しい神様=自分自身がプレイヤーになるという選択肢を見つけます。水玉の中に入り、命の循環に混じる羽生さん。

祈る 祈り続ける 希望を 夢を

ゲーム画面には「→祈る←」の表示。コントローラーで祈るを選択し、ゲーム機の前から離れる羽生さん。雨の降る黒いグリッドの中で踊り、暗闇の中で祈ります。

祈り続ける 神様 見えていますか
届いていますか 優しくて 儚くて
綺麗で 壊れそうで

風が吹き、上を見つめる羽生さん。足元には白い羽が落ちています。白い羽を拾い上げ宙に放つと、黒いグリッドの幕が開き、ウユニ塩湖のような美しい場所に出ます。この羽は先ほど書いたとおりデルタルーンの紋章に表されている救済の天使のものでしょう。羽生さんの贖罪や祈りの気持ちが届き、天使が救いの手を差し伸べたのでしょうか。

守りたい
希望の 夢の 命の続きを

この黒いグリッドの幕もまた「第4の壁」的なものと思われます。グリッドの幕が開くのは、現実世界に、我々プレイヤー(観客)に、自分の祈りが届いたのだという表現(あるいは「届いてほしいという」願望)ではないしょうか。前半は暴力で破壊しようとした「第4の壁」を祈りの力で超え、美しい場所へ辿り着いたのでしょう。

春よ来い~エンディング

「春よ来い」を滑った後、羽生さんはステージ上でも舞い、胸の前で手を組んで祈ります。何度かモチーフとして使用されていたタロットカードの「死神」には祈る聖職者も描かれており、この場面はまるでカードそのものの構図のようにも見えます。死神は再生の意味もあるようなので、悪いことばっかりじゃない。

祈り続ける いつか終わるとしても
夢の続きを 大切にする
光の糸が そこにある限り
何を考えても 何が苦しくても
本当にやめることを選ばない限り 続いていく
光と共に 明日はやってくる 道は分かれ続ける
どんな選択が待っていても その先の未来に何が待っていても
ケツイを持って 生きていく
道に迷ったときは 立ち止まってもいい
突き進んでもいい と思う 自信はないけれど
巡り巡って どこかにたどり着くように
命が巡るように 命が星に届くように

ここでステージから降りてリンクを滑っていくんですが、リンク上には樹のようなものが*20。おそらく命の循環を表すものと思われ、羽生さんが滑るとドット絵のようにモザイクのかかっていたところが剥がれて綺麗になっていきます。そして「RE_PLAY」のLがRに替わり「RE_PRAY」となり画面にノイズが入った後「FIN」と表示されゲームは終わります。
エンドロールが流れ、曲はエストポリス伝記2のメドレー。魔術師の羽生さんが世界地図の上を滑ります。いつか終わる夢→三毒様→Megalovania→破滅への使者→いつか終わる夢:Reとつながり、魂を空に送ります。「いつか終わる夢」はFF10の曲ですが羽生さんの演技の文脈的におそらく「異界送り」*21がモチーフなので、異界送りにてこれらの魂を救った…という事になるのではないでしょうか。
ここはエスト2のキャラクター達がそう願ったように、後世に平和な世界を残したいというメッセージかなと感じました。地図が現実世界のものであることから、昨今の争いの絶えない世界情勢を憂う気持ちもあるのでしょう。
そしてここの描写が羽生結弦、めっちゃ優しい!」と思ったんですけどね、異界送りで悪役キャラと化した三毒様、Megalovania、破滅への使者も救ってくれてるっぽく見える事です。
あまり上手く言えないですが…ファンの事を助けようとしてくれてるのかな…って思いました。みんなに届いてほしいですけどね、羽生さんからのメッセージ。どうですかね。届くと良いですね。祈るしかねえな。

あとがき

まずは纏めるのが下手すぎて長文になりすぎた事をお許しください。離婚が発表される前からこの文章は書き溜めていたんですが、まさかこんな事にはなると思いませんでした。スキャンダラスに取り上げられたら嫌だな~と思いつつも「やっぱりこれは、羽生さんがファンダムに向けて言いたい事なんだろうし…」という事でブログにまとめました。
以前から界隈に風紀委員(いや、ヤンキーに近い)呼ばわりされ、羽生ファンから嫌われまくりブロックされまくっていたので「結論ありきで書いたんだろ!」と言われる気しかしないんですが、羽生さんからの解釈のヒントや、根底にあるUNDERTALEのGルートの事を"キャラ"込みで知れば「ファンダムへのお叱りの言葉」以外で受け止めるのは難しいと思います(とくに前半は)。もし反論したいのであればきっちり(私のように)ゲームをやるなり、プレイ動画をじっくり見てから反論して下さい。どうせ「ファンダムを陥れたいんだろ!」とか言われるでしょうけど、残念ながら私は熱心な羽生オタクであるからして、羽生さんが名前を挙げた作品はできるだけチェックするようにしてるんですよ。ははは。あーあ。
私も善良なオタクとは言えませんが「ファン無罪!オタク無罪!」「加害するやつはファンではない!」ってやってる人は、少し落ち着いて自分のことと向き合ったらどうですかね。でも、向き合いすぎてつらくなっている人は、少し休んで下さいね。
とにかく今は、羽生結弦さんと(元)パートナーさん、両家ご家族の皆さん、事務所スタッフ、関係者の皆様の心身のご健康を祈っています。とくに羽生さんとパートナーさん。生きてね。死なないでね。私が願っているのは、ほんとにそんだけです。どうかご無事で。

*1:Genocideルート。倒さなくてもいいはずのモンスターをひたすら倒しまくるとこのルートになるが…

*2:あとで登場する他のタロットのモチーフとも関係しています

*3:画面中に出てくるここの演出がMOTHER2のギーグのネスサンネスサンネスサンに似ている

*4:画面には「息をする やめる」だが、音声では「する」が省かれている

*5:https://dic.pixiv.net/a/Chara%28Undertale%29

https://undertale.fandom.com/ja/wiki/Chara

https://dic.nicovideo.jp/t/a/chara%28undertale%29

*6:生きるだけ赤文字

*7:UNDERTALEの❤、「ケツイ

*8:「東京喰種」7巻63話以降:力を得るために金木が喰種を共喰いし始め、「東京喰種」7巻66話:金木くんが「まずい」「吐きそう」「最低の味だ」と言いながらヤモリを喰う場面あたりに歌詞が対応。喰種は喰種を食べるとパワーアップするんですが、自我が喰った喰種たちに侵されていきます

*9:そしてこの13番は完全数の12、そして新たなスタートを意味する1から形成されており、冒頭に出てきた「魔術師」とも関係するものとなっています。

*10:個人的にすごく印象に残っているのが「風や川の中にドプンと入り込んでいる感覚、自然の中に溶け込んでいく感じだった」という2017年のヘルシンキワールドでのコメント。もう見れなくなっているし、有料記事だからアーカイブにもなってない…しかも他の新聞はこのコメント拾ってない…後藤さんさすがッス…

*11:阿修羅ちゃんだともっと開き直ったモノローグだったと思うんですが、早く放送が見たい…

*12:サンズと戦う場面がモチーフの空間か。

*13:「東京喰種」7巻63話辺り~:市松模様の床の上でヤモリとバトルするところ?

*14:ここで「ああ、こうやってみたら?」「なるほど…」とか言ってるのが「東京喰種」7巻65話:「どうだ?」「浅いか…」と呟きながら力を試すかのように戦う金木くんとダブる

*15:邪悪な方法でスーパーサイヤ人になったようなものだと思って下さい

*16:タロットカードの「死神」のモチーフはここにもかかっているわけです。後半にも登場します

*17:ちなみにUNDERTALEではアズゴア王が人間の魂を集めて地下世界~地上世界のバリアを破壊しようとしていました…

*18:東京喰種:Reを意識したんだろうか

*19:トリエルというお母さんみたいなキャラクターがパイを作ってくれるんですが、まるでトリエルをこれから○すかのような演出があったり、集合写真のキャラクターの顔に赤い×がついてたり…

*20:「いつか終わる夢」で出てくるものと同じかな?

*21:FF10世界では死んだ人の魂を放置しておくと魔物になるので、異界(いわゆるあの世)に魂を送る必要がある